BOOK:官報複合体 権力と一体化する新聞の大罪
- 作者: 牧野洋
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/01/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本は立花隆(ISBN:416351080X)からのリンクだったかな。
著者は現在在米の元日経経済記者だそうで。
タイトルの官報複合体は官と報道の複合体ってことで、要するに権力側に寄った報道姿勢を指しているらしい。
字面からはなんとなく癒着の匂いを感じるけど、内容としては別に汚職の告発とかではなくって、本書全体をとおしたメッセージは日本のジャーナリズムに対する批判(とアメリカ的なジャーナリズムへの賞賛?)。その批判の対象の一部が、日本のジャーナリズムの権力側への傾倒。
他にも色々と日本のジャーナリズムに批判はあるようだけど、ウラには日本のジャーナリズムに対する危機感で一本筋が通っているように感じた。
確かに、日経は読みにくいとか、朝日は左寄りだの産経は右よりだの、色々と新聞の特徴とかは巷間で言われているとは思うけど、自分には本質的な各紙の違いが判らない。
それもこれも権力側(っていうとあれだけど、要するに情報を持っている側)に張り付いて、夜討ち・朝駆け式でリーク情報を集めて記事にするっていう(「日付モノ」ってギョウカイでは呼んでいるらしい)取材からは、同じ紙面になって当然だろうって納得した。確かに、速報記事のみでは大本営発表にしかならないな。
一方、本書の中でもしきりに引き合いに出された米国のJスクールでのジャーナリズムに対するスタンスとか、ウオーターゲートとかで名前を挙げたWSJの調査報道とか、この本を読む限りではアメリカのジャーナリズムは日本とは違うな*1とも思わされた(これは、本書から得た感想でしかないので実態は知らないが)。羨ましい。
著者はサラリーマン記者であることに見切りをつけて渡米した経歴の持ち主なのでバイアスが掛かっている可能性を否定するつもりは無いが、本書が指摘する日本ジャーナリズムに対する批判は正当だと自分は思うし、もっと一般人が意識しても良いところじゃないかなと思う。
例えば、3.11の時の報道各社の大本営発表っぷりとか、各種事件報道(陸山会しかり、尖閣ビデオしかり、その他マスコミを賑わす類の全ての事件)の各社右へ倣え的な姿勢とか、厚労省の村木さんだっけ?郵便関連の事件とかに対する報道各社の手のひらの返しっぷりとか、報道自体が信用できないと思っている。
日本のジャーナリズム界隈にも不連続な変化が必要なんだろうな*2。