要求の追跡可能性(3)
前回からの続きにはなっていないが、関連書籍を読み始めていて、ヒントになる記載があったのでメモを残しておく。
追跡可能性とは、仕様書のある部分とそれに対応する設計書の部分とが相互参照できることを指し、究極的には情報システムに組み込まれた部分と相互参照できることを意味する。
目標図式がいったんでき上がれば、目的からシステム要求の動機づけとなっているシステム目標を導き出す方向へ進むこともできるし、システム目標からそれらを正当化している組織目的へと戻ることも可能となる。そのような意味で目標図式は、要求の追跡可能性を支援するものである。
進むにしても戻るにしても、要求の追跡可能性は要求のライフサイクルの両方向への記述性能と追随性能により決まる。(Gotel and Finkelstein, 1993*1:Morris 他,1994*2 )
いずれも要求定義工学入門(isbn:432009719X)*3からの引用だが、ここで述べられているのは、「要求」から下流工程の成果である「設計」及び「情報システムに組み込まれた部分」*4への追跡可能性と、要求から遡った「システム目標」への追跡可能性を示している。
他の文献も含めて引き続き追っていくが、本論の趣旨である「要求の追跡可能性」に対するユースケースからの分析結果を、評価・検証する1つの材料として押さえておく。
なお、先日くさしたBOOK:ゴール指向による!!システム要求管理技法 - No Bugs, No Lifeの「ゴール指向」についても、要求定義工学入門を含む他文献を踏まえ、改めて評価する必要がありそうだ。自分自身の不勉強を恥じる(文章の出来についての批判を翻意するつもりは無いが、「ゴール指向」の意義について自分自身の見解を出すのはまだ留保するという意味で)。
*1:Gotel, O.C.Z and Finkelstein, A.C.W.(1993) An analysis of the requirements traceability Technical Report TR-93-41.Department of Computing,Imperial College, 1993.
*2:Morris P. Coombes A. and McDermid J.(1994) Requirements and traceability, 1st International Workshop on Requirements Engineering:Foundation of Software Quality REFSQ '94.Utrecht, The Netherlands, 1994
*3:Pricies Loucopoulos/Vassilios Karakostas/[監訳]富野壽